平成30年度 ごあいさつ

東北大学「医療工学技術者創成のための再教育システム」
REDEEM (Recurrent Education for the Development of Engineering Enhanced Medicine)
平成30年度の開講にあたって

特定非営利活動法人 REDEEM 代表理事
東北大学医療工学人材育成委員会 委員長
東北大学 名誉教授
東北大学大学院医工学研究科 特任教授
山口 隆美

REDEEM(東北大学「医療工学技術者創成のための再教育システム」)は、平成13年以来、17年間にわたり毎年たゆみなく実施され、のべ修了者400名を超える、社会人技術者を対象とする再教育プログラムです。

我が国社会の少子高齢化は、社会構造のあらゆる側面に深刻な影響を及ぼしており、とりわけ、医療のあらゆる面におけるイノベーションが必要となっています。国も、医療に関係する技術革新・産業育成を成長戦略の要としておりますが、その鍵は、医学研究と工学技術を有機的に統合して新しい医療を創り出すための人材養成です。

東北大学は、戦前に遡る医工連携の研究教育の歴史の基礎の上に、平成13年度から種々の国家プロジェクトの援助を受け、「医療工学技術者創成のための再教育システム」(REDEEM)のタイトルのもと、社会人技術者に対する医学・生物学・医工学の再教育プログラムを開発・実施して来ました。その目標は、我が国の成長戦略の鍵となる新しい医療工学産業分野の基礎を築く人材を養成することです。

この教育・研究の実績を基礎に、東北大学では平成20 年度から我が国初となる大学院医工学研究科が設置され、現在もなお、我が国唯一の医工学の大学院研究科として医工学教育・研究を推進しています。REDEEM 事業は、これらの基礎のうえに大学院教育と密接に関連した社会人再教育プログラムとして実施されています。REDEEM は、先端技術と医療の双方に通じた実務家の養成を目指し、先端技術をもって医療の発展を先導できる人財、すなわち、医学や工学といった従来の専門分野を超えた境界融合的な先端技術に精通した研究者や上級技術者、また、先端技術を医療に応用できる医療従事者など、時代の要請に応える職業人を養成することを目標とします。

教科内容は年間51コマの講義と、20コマの実験・実習からなっており、基礎となる分子細胞生物学・解剖生理学・病理学・薬理学を重点的に学習し、この基礎の上に、内科・外科・画像医学の臨床医学、高齢化社会の医療に必須となるリハビリテーション医学、スポーツ医学などの科目を履修します。また、この REDEEM の修了者を対象とする上級臨床医学実習 (ESTEEM) を毎年開催 (平成28年度は事情により中止) しています。平成24年度からは、この REDEEM のコースを受講することにより、東北大学大学院医工学研究科博士課程後期3年の課程 (博士課程) の特論講義の履修単位を取得することができるようになり、社会人大学院コースを目指す技術者は、博士の学位取得において別途講義科目を受講する必要がなくなりました。REDEEM が他の類似のプログラムを寄せ付けない特色としている実験・実習も専用実験室の拡充と整備により、ますます充実しています。

このように、REDEEM は、基礎医学から臨床医学のエッセンスを短時日で、しかも、実際に手をくだして体験する実験・実習を通じて体得する教育プログラムであり、現在医療機器関連の産業に従事している技術者ばかりでなく、今後、ライフイノベーションに参画して、ビジネスチャンスを広げたいと考えている工学技術者の受講を心からお待ちしております。

教育目標
  1. 産業社会の第一線において、研究・開発にあたっている社会人技術者に対して、生物学・医学・医工学の基礎教育を行い、医療工学産業を創成できる人材—医療工学技術者を創り出します。
  2. 創成される医療工学技術者は、医療の実践現場において、医師・医療従事者と対等なパートナーとして医療工学の技術開発・研究にあたります。
  3. 網羅的な知識ではなく、生物学・医学・医工学の考え方のエッセンスを、工学技術の言葉・体系で伝え、研究・開発の自律的発展の基礎とします。
  4. 空理・空論を排し、実験・実習を通じ、経験に裏付けられた知識と技術の獲得を目指します。